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「そう、〝彼〟ですの。・・・・・でも、可愛くないので使い捨てですわね」
口元に手を当てるアリス。
そこに集められた黒い魔素の量を見て、身体が強ばった。
彼女の魔素の性質は───〝傀儡〟
そして、舌舐めずりをするアリスの視線の先には。
「───クライシュ!!逃げ・・・・・」
アリスの思惑に気づいた時にはもう───遅かった。
まさか自分に来るとは思っていないのだろう。呆けたクライシュの顔が一瞬見えて・・・・・刹那、遮られた。
それは、ほんの数秒の出来事。僅かに遅かったのだ、私は。
その場に崩れ落ちそうになる身体を、華奢な足で支える。
───間に、合わなかった。
「ごきげんよう、そして・・・・・」
アリスは逃げようとする彼の腕を掴み、耳元で囁く。───それはまるで口づけをするようにも見えて。
「さようなら」
彼女がそう言い切った時、その顔は妖艶に微笑んでいた。
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