5934人が本棚に入れています
本棚に追加
/387ページ
トン、とぶつかってきた〝何か〟を軽く受け止め確認すると、それは人だった。
「あ、ああ!! 申し訳ございません!!」
「・・・・・いえ、いいのよ。気をつけてね」
腰を直角に折り曲げ必死に謝るのは、この城で働いている侍女の1人。あまりの必死さにフレデリカも若干引き気味である。
よくよく見ると、何故だか顔が青ざめていた。そればかりか、瞳は潤み今にも泣き出しそうな表情だ。
───・・・・・どうしたのかしら。
手ぶらのまま、慌てて何処かへ向かう───フレデリカにはそれが気になった。
「───ねえ、そんなに慌てて一体何が・・・・・」
あったの───そう聞こうとしたフレデリカは、最後まで台詞を言うことができなかった。
必死の大声が廊下に木霊する。
「本当にすみません!! 急いでいますので、私はこれでっ・・・・・!!」
「あ、ちょっと・・・・・」
フレデリカの制止も聞かず、ばたばたと慌ただしく駆けていくメイド。その姿はあっという間に廊下の角へと消えていった。
───・・・・・一体、今のは何だったの・・・?
さらに気になるのは、最後に彼女が言っていた言葉だ。
〝早くウェルバート様にお伝えしなければ・・・・・!!〟
その言葉が何を意味するのか。そのままの意味なのか、それとも・・・・・。
最初のコメントを投稿しよう!