25.相対

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一介のメイド如きの用事で、皇帝が取り合ってくれることは無い。その程度の常識、彼女でも知っているだろう。 ・・・・・もし、取り合ってくれるとしたら。 ───緊急事態の時かしら? ・・・・・まさかね。 窓から差し込む朱色の光に目を細め、声に出して軽く笑う。こんな長閑(のどか)な時間に、緊急事態とは考えにくいものだ。 しかし数分後───その足は急に立ち止まった。 「───変ね、ここだけ妙に魔力が濃いわ」 そこは中庭に続く扉。・・・・・その先だ。 この先に何かが起きているのか。 まさかね、とは思うも、扉に触れた手は少し震えていた。怖くはないが、第六感が危険だと告げている。 「ないない、そんな非日常的なことなんて」 その忠告を振り払い、笑いを含んだ声でフレデリカは扉を開けた。夕焼け色の空と花の香りが飛び込む。 そよ風に髪を揺らしながら、緑色の芝生に足を乗せた時。 ───あら? 目を向けたその先には、呆然と立ち尽くす黒髪の幼女。 ついさっき、ショーを披露してくれた幼女であり、ウェルバートとの会話で希少魔族という疑いが浮上した者でもある。 青ざめた表情でただただ立っているのは気になるが・・・・・。 「コウちゃ───」 まさか、こんな所で会えるなんて・・・・・!! 何処かおかしいとは思ったものの、愛する存在に出会えたことで顔が輝く・・・・・が、彼女の下に横たわる人物を見て、その表情を引っ込めた。 ───真っ先に見えたのは、鮮やかな赤。 特徴のある橙色のくせっ毛、王宮騎士団副団長専用の制服、僅かに横を向いた青白い顔にいつもの笑顔はなくて・・・・・。 「クライシュ・・・・・君?」 ───赤い血溜まりにうつ伏せに倒れていたのは、フレデリカの知る者だった。
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