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───そして、ついにその時は来た。
ゆらりとクライシュの影が揺らめいたかと思うと、荒い風を起こし、こちらへ大きく跳躍する。
そういえば風の精霊だっけか。
そんなことを隅に考えながら、かまいたちさながらの鋭い風の刃を紙一重の所で避ける。
完全に避けきった───と思った私の目の前に突然現れた複数の刃。そして空気を裂く鋭い音。
「・・・・・っそんなのあり!? これじゃあ、もう・・・・・」
四方八方。見えていても避けることは不可能、そもそも逃げ場がない。
万事休す、無数の刃に切り刻まれ───
「なんてね」
───たりはしなかった。
そんな簡単にやられたりするものか。・・・・・中身が反応出来なくとも、身体が勝手に動いてくれる。
「魔法は私に効かない───らしいよ?」
にやりと笑うと、暴風に向けて腕をひとふり。触れた瞬間に『解』することによって、全てを無害の魔素へと変えていく。
・・・・・指示を失った魔素は大人しく消えていった。
風の刃と言えども、所詮その元は魔素。解除は可能だ。
「さて・・・・・どうにもこうにも、気絶させなきゃ落ち着いて取り除けないかなぁ」
向かってくる刃だけを解していても埒が明かない。
暴風と共に走るクライシュから離れながら、後の惨状を見てため息をついた。
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