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風の暴力により鮮やかだった花々は散り、切りそろえられていた芝生は無残な姿に。
・・・・・低木までも傷つけられ、中庭全体がよく分からないアートになってしまった。
俗に言う『芸術は爆発だ』状態である。───だめだ、早くなんとかしないと。
「クライシュ、おーい。クライシュくーん?」
目の前でひらひらと手を振ってみても、無表情は変わらない。もはや別人のような有様だ。
・・・・・まあ、予想通りでもあるが。
完全に支配されていることを確認すると、私は立ち止まった。
彼も合わせるようにして止まったが、攻撃の手は止まない。依然として、剣そのものと言っても過言ではない風が襲ってくる。
───が、それはさほど問題ではない。
「魔素の気配探知は、うんざりする程練習したってばっ!!」
死角から飛び込んできた刃を、空気中の魔素を固めた壁で防ぐ。キン、と金属がぶつかり合うような音がして相殺された。
そして、間を開けずに次なる攻撃───だが、反射的に身体が動く。頬の横を突風が通る。
全ての攻撃を避けられ、目を見開くクライシュ。私でさえも、これには驚いた。
───前までは確実に、今のは反応できなかったのに・・・・・。
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