26.中庭にて

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まあ、それはさておき。 クライシュに絡みついた氷は簡単には砕けない。しかも、アルマダとの戦いのように徐々に凍っていく仕組みだ。数分もすれば、立派な氷像が出来上がる。 流石に魔力の塊である精霊であっても、〝黒〟魔素をフル活用した魔法陣は破れまい。 安心安心、とゆっくり息を吐いた。───もう終わったのだと勘違いをして。 しかし、それは間違いだった。 「え?」 勢いよく顔を上げる。見えたのは衝撃的な光景。 突如として巻き起こる熱風───そして、クライシュに絡みついた氷はジュッと微かな音を立てて一瞬で蒸発する。 何事もなくその場に立つクライシュを見て、思い出したのはアルマダの魔剣だった。 ん?・・・・・デジャヴかな? ただ、気になる点がある。 あの時も溶かされたが・・・・・あれは白い魔素の方が少なかったはずだ。しかし今回は・・・・・。 「おっかしいなぁ~・・・・・白は混ぜてないのにな」 再び前方から襲いかかる風の刃を避ける。その衝撃てま髪が舞う。 慣れてはいないとはいえ、典型的な魔法陣。それも黒い魔素だけ(・・)で作り上げたのだ。 ───いや、そもそも、だ。 「なーんで、君は炎を扱える(・・・・・)のかな?」 クライシュは風の王族精霊だったはず。自身の属性以外の属性は扱えない筈なのだが・・・・・。 現に彼は炎を身体に纏わせているではないか。 絶え間なく流れてくる風に火の粉が乗って熱い。 ───どーなってんのかなぁ・・・・・これは。せっかくの魔法陣もあっさり破られるし、これじゃあ他のも無理かもしれないな。 宙に設置された氷系の魔法陣───最も拘束のイメージがある属性というのが仇となった。・・・・・もしかしたら、精霊は相当魔力が多いか、それとも魔法の扱いは長けているのか。 両方だとしたら最悪だ。
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