26.中庭にて

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「とにかく、魔法陣と氷変換は使えないな・・・・・。何とか他の方法で・・・・・」 ───動きを封じるしかない。 そう言いかけた言葉が詰まった。あることに気づいて息を呑む。 クライシュが纏う炎───そこに見えた色は。 「な、んで・・・・・黒いの(・・・)?」 ・・・・・私と同じ魔素の色をしていた。 ごくり、と鳴った喉。手で魔法を解しながら、目だけがそこに釘付けになった。 私よりは薄いが、それでも立派な黒色。───しかし、それに対しクライシュの体内のは白。 ・・・・・アリスの魔素が混じっているとはいえ、あくまでもそれは他人のもの。クライシュが使えるわけじゃないはずだが。 ───・・・・・これは、どういうこと? 出会った時には気づかなかった黒色が、今でははっきりと見える。何故、気づかなかったのだろう。 そういえば、と思い出したのはクライシュの様子だった。 確か初めは、魔素を敏感に感じ取る精霊故に、気分が悪そうに顔を顰めていた・・・・・が、数十分かそこらで平気そうな顔になっていたのである。 もし、それがこれに関係しているのであれば・・・・・。 ぼそりと口が勝手に動く。出てきたのは自分でも信じられない言葉だった。 「もしかして、元々所持していた・・・・・?」
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