5934人が本棚に入れています
本棚に追加
/387ページ
───いや、まさか。だとしても、どこで・・・・・?
黒色の魔素は元々、希少魔族の変異体から発見されたもののはずだが───なぜ、精霊種が?
ぐるぐると疑問だけが巡る。気づいた時には、既に距離を詰められていた。
目の前に突然として現れたのは、こちらへ手を伸ばすクライシュの姿。
───その手は的確に首元を・・・・・頚動脈を狙っていた。
「───っちょ、ちょっとタンマタンマだって!! 少し考え事をしてただけだからぁっ!!」
本能で勝手に身体が動く───が、遅かった。
「・・・・・かっ・・・・・は」
一瞬早かったクライシュの腕が、私の服を掴み地面に押し付けた。背中越しに衝撃が伝わり、肺の中の空気を吐き出す。
ちくちくした草の感触が頬に痛い。クライシュの顔が逆光で暗く見える。
無表情な顔が。
「クライシュ・・・・・っ!!」
胸ぐらを掴む手を退けようとしても、何故かピクリとも動かない。情けないことに、歯を食いしばり力を込めても、この状況は変わらなかった。
───・・・・・精霊にも敵わない、か。仕方ないのかもね、中身はただの人間だし。
最初のコメントを投稿しよう!