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「・・・・・ぅ、あ」
息が詰まった。あまりの苦しさに、草を掴む手に力が入ってしまう。
徐ろにクライシュの顔に目を向ける。相変わらずの無表情だ、と苦笑にも似た乾いた笑いを浮かべた───その時だった。
───ジャア、ワタシガヤッテアゲル
視界を過ぎったのは、黒い一線。
「・・・・・っ!!」
ふいにクライシュが顔をしかめた。同時に首から手が離れる。
何事だと思う前に、ポタリと生暖かい液体が肌に触れた。
───赤い、それは。
脳がソレを認識する前に、私の身体は動いていた。力なく倒れ込む彼を、ゆっくりと仰向けに返す。
「クライシュ!!」
青白い顔に呼びかけるも、当たり前のように返答はなく、ただただ無駄な時間だけが過ぎていく。・・・・・触れた所がとても冷たい。
───私は、どうすればっ・・・・・!!
脇腹にじわじわと広がる大きな赤い染み。それは止まる気配がない。
肝心の魔法は使えず、初めて目の当たりにする血だらけの光景はあまりにも衝撃的で、激しく心臓が跳ねた。
私がやった・・・・・のは間違いないだろう。他の誰でもなく、恐らく私が。
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