26.中庭にて

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「どうしよう・・・・・」 回復魔法は疎か、魔法すら使えない。クライシュの魔素に干渉はできないし、そもそも自分の魔素で何が出来るかなんかはたかが知れてる。 絶えず流れる血が視界に入り、喉の奥から何かがこみ上げてきた。思わず両手で口を押さえる。 そこでハッと我に返った。 「血・・・・・!! そ、そうだ。とりあえず血を止めなきゃ・・・・・」 尋常ではない血の量だ。失血死という概念があるのかは分からないが、このまま放ってはおけない。───今は謎の声よりもそれが先だ。 立ち上がって辺りを見回す。 「包帯・・・・・はないか、代わりになにか・・・・・」 何もないことぐらいは自分でもわかっている。こんな長閑(のどか)な中庭に、包帯の代わりが置いてある方がおかしい。 それでも、藁をも掴むような気持ちで探す。・・・・・とにかく何かに縋りたいのかもしれない。 ───そうだ、と思い出した。どこかの本で、服を破ることで包帯の代わりにしていたはずだ。 服に手をかけた時、ふと人の気配を感じて横を見る。 「・・・・・っ」 城の中へと繋がる扉の向こうに誰かがいる。背に走る緊張感にごくりと唾を飲む。 ドアの開く音がした。
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