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となると、ひとつ疑問が残る。ウェルバートは聖殿へと送られた。なら───何の為にここにファーファラがいるのだろうか。
怪訝そうに窺うとパチリと視線が合った。
「───個人的に聞きたいことがありまして」
真っ直ぐにこちらを見る。強い視線に押されると思った、その時。
その姿が一瞬ぶれた───瞬間、ファーファラの姿は消えた。
そして次に感じたのは背後の気配。
「貴方は何者ですか?」
「・・・・・それは私の台詞ですね」
指先から冷たい感触が伝わる。喉元に突きつけられたのは鋭利なナイフ、触れる直前にそれを指で押さえる。───衝撃で髪が揺れた、
・・・・・切れてはいない、が。内心はヒヤッとした。
───あっぶないなぁ・・・・・そこそこ速かったし。
ほんの一瞬の出来事。だが、そこからは相手がかなりの手練だと読み取れた。
Sランク冒険者か、それとも───その手の職業持ちか。
私の指で挟まれているナイフを動かさずに、ファーファラは答える。
「私は一介のメイドです。コウ様が想像なされているような怪しい者ではございません」
「・・・・・やだなぁ、疑ってないですって。私だって、ただの可愛い可愛い無垢な幼女なんですから」
ええ、嘘はついていませんとも。
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