26.中庭にて

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だから何だ?と言いたげなキョトンとしたファーファラの顔が目に浮かぶ。これではっきりと確信した、ファーファラに冗談は通じない。 頭が痛くなりそうなのを抑え、今の状況を変えるべく提案する。 「・・・・・とにかく、この状態で話すのもアレですし、お互い今は休戦状態にしませんか」 「・・・・・・・・」 長い間の後に、わかりました、と平坦な声が聞こえる。と、同時にナイフに込められた力が無くなった。 自由になったソレを、くるりと宙で回すと刃先から柄に持ち替える。そうして、子供らしく無邪気に笑いかけた。 「ああ、よかったぁ。いきなり刃物を突きつけられるんですもん、びっくりしちゃいました」 しかし、ファーファラの表情に変化はない。黙って見下ろしている。そこから放たれる威圧感を流し、おどけたように私は口を開いた。 「さて、何を話しましょーか? と言っても、私は話すことなんて何も───」 無いですよ───だが、その台詞はファーファラの一言によって遮られる事となる。 「白髪の女性」 思わず言葉を呑み込んだ。黙り込んでも、ファーファラの台詞は続く。 「・・・・・そして、貴方とクライシュ様の3名が中庭にいた、という情報に間違いはございませんか?」 「・・・・・、よくご存じで」 そう余裕そうに答えながらも、目の前のファーファラの一挙一動に警戒する。 ・・・・・今度はしっかり対処できるように。 今のところファーファラの動きに不審な点はなく、幸いなことに落ち着いた声で話すことが出来た。 それで?と先を促す。 「───その情報と共に伝えられたのは、コウ様とクライシュ様が戦闘しているとの情報」 「・・・・・・・・」 僅かにその台詞に動揺するも、私は何も言わない。無言でただただファーファラを見上げる。 そんな私の様子を気にも止めずに、彼女の言葉は続いた。
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