26.中庭にて

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「・・・・・もし、そうだと言ったらどうするのです?」 殺気を発しても怯えず、逆に微笑んだ私を見て、ファーファラの息を呑む音が聞こえた。今まで自分の殺気をまともに受けて、ここまで余裕がある者は初めて見たのである。 改めて只者ではないと認識し、ファーファラはさらに警戒を強めた。───気を引き締めなければやられてしまう。 久しぶりの驚きを噛み締めながら、たっぷりと間を開けようやく口を開く。 「・・・・・、あくまでもコウ様はウェルバート様が雇ったお方。メイドである私が、勝手に出来ることはそんなに多くはありません」 ですから、とファーファラの雰囲気が一気に張り詰めたものへと変化した。それに合わせて私の魔素も、心做しか動きが激しくなったようである。 「───ここからは、メイドではなく本業(・・)の私として対処を開始します」 そうして、懐から取り出される隠されていたモノ。白銀のツインダガーを十字に構え、静かに重みのある声を発した。 「《沈黙の断罪人》ファーファラ=ディアン。危険人物と見なし───」 ファーファラの澄んだ青紫色の瞳が、こちらを見据える。踏みしめた足元から大理石の冷たさが伝わってきた。 「貴方を、無力化致します」 緊張感漂う空間に響き渡る無機質な声。それは静かに広がり、重苦しい緊張感と共に溶け込んだ。
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