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「・・・・・・・・」
不法侵入者がどんな顔をしているのか見たくないか?───ふと脳内に浮かんだその言葉。それに私は一人で頷いた。
・・・・・見てみたい。
それは単なる好奇心からかもしれない。
わざわざ城内の客室で仮眠をしているのだ、相当度胸がある者なのだろう。
そうと決まれば、すぐに行動だ。起き上がる前にお顔を拝見しなければ。
───ここからベットの向こう側に行くには、1度大きく迂回する必要があるな。気配を消しながら四つん這いで行こうか。
まさか自身の技術がこんな事に使われるとは。
戦いの為だけに魔素の扱いを必死に覚えていた私には、到底想像できるものではなかっただろう。
「・・・・・《霧散》」
静かに呟いた声に合わせて、自身の魔素がゆっくりと広がる。
外にいるファーファラに気づかれるリスクを減らす為、今回行うのは自身の魔素と空気中の魔素との境界のぼかしのみ。
魔素量を均等にする為に自分の魔素を空気中に薄く広げる・・・・・という完全な目くらましをする必要はない。
ぼかすだけでも気配は曖昧になる。魔力感知に長けている者や、野生動物相手でなければ誤魔化せる。
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