27.漆黒

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「・・・・・・・・」 それを見てふと思ってしまった───触ってみたい、と。 それは単なる好奇心。そして、寝ているのだから少し触っても気づきはしないだろうという油断、薄れた警戒心。 それらの事に気づいたのは、触ろうと手を伸ばした時だった。 「───つーかまえた」 「え゛」 楽しそうな澄んだ声が聞こえたかと思うと、パシッと軽い音をたて、伸ばした手は青年の手によって掴まれる。 黒髪に触れる前に虚しく宙で止まる私の手。 「・・・・・え?」 にこにこと柔らかな笑みを浮かべる青年の前で、再び戸惑いの声を発する。 いまいち状況が掴めず、私は目をぱちくりさせた。 ルビーのように鮮やかな(あか)い瞳の中に私が映り込む。ぎゅっと優しく手を掴んだまま、青年は口を開いた。 「ここでは初めまして、かな? 僕はイサ、よろしくね」 突然の自己紹介に思考が一旦ストップする。たっぷり間を開けて私は返した。 「・・・・・はい?」 わけがわからないよ。
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