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───あの自己紹介の後、青年はここへ来た経緯を教えてくれた。ご丁寧に紅茶まで用意してくれて。
簡単に言うと、このイサという青年は城の前で倒れていた所を門番に助けられたらしい。そして、下っ端のメイドの案内でこの部屋へ来た、と。
確かに、ここに客がいることをメイド全員が知っている訳では無いだろう。・・・・・しかし、独断で部外者を入れたりするだろうか。
しないな、と私は自問自答する。
部外者がもし何か起こしてしまったら、そのメイドは良くて解雇。最悪の場合は、命を失うかもしれない。そんな危険な橋は渡らないのが普通だ。
それにイサは自身を冒険者だと言っているが、その細い体躯からは想像ができない。魔導師という可能性もあるが・・・・・。
どちらにしろ怪しいのは間違いない。
横を盗み見ながら考える。まさかこんな子供から怪しまれているとは、本人も思っていないだろうに。
───だけど、これで疑いが晴れるどころか怪しさ満点、つまりは不審者決定だ。おめでとう。
紅茶を楽しみつつ、私が心の中で惜しみない拍手を送っていると、その本人が懐からまた何かを取り出した。
また紅茶缶かと思ったが、その予想は外れたようだ。
取り出したのは、男性よりも女性向けのレースをあしらった可愛らしい袋。イサはゆっくりとそれを広げる。
───そこへ現れたモノに、私の目は釘付けになった。
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