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「───食べる?」
そう聞いてきた彼の手の乗っているのは、ツヤのある焦げ茶色のサイコロサイズもの。
懐かしい甘い香り漂うそれは───間違いない。
───チョコレートか!!
夜中に食べると悪魔を召喚してしまう、という所業をなす食べ物。
・・・・・だが、とても美味しい。さらにビターだとなお良し。
斯く言う私も夢中で食べたものである。後々になって後悔し、一時期は絶ったが・・・・・それでも、いつの間にかまた買い込んでいた。
異世界にはないだろう・・・・・そう諦めていたものが、今!!目の前にある!!
なんという奇跡。なんという幸運。神様仏様イサ様ありがとう。
勢いよく頷こうとして、待てよと動きを止める。
───そもそも相手は知らない人・・・・・そんな人から食べ物を貰っていいのか、私。
少し考えてみれば怪しい話だ。何故、初めての相手をこんなにももてなしてくれるのか。
幼い子が食べ物に釣られて誘拐、などというのは定石だったはずだ。罠という可能性も高い。
「・・・・・、いらないの?」
不自然に動きを止めた私に対し、イサは怪訝そうに再度尋ねた。
いや、勿論いる。貰いたいのは山々なのだが・・・・・。
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