28.アフタヌーンティー

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ちらちらとチョコレートに何度も視線を送る。ふんわりと香ってくる甘さが堪らない。 涎が垂れそうになる口元を手の甲で押さえた。その様子を見て、イサがクスッと表情を緩める。 「ほら、遠慮しなくていいんだよ?」 はい、という声に顔を向ければ、目の前にはチョコレートを掴んだ綺麗な指が。 甘美な誘惑が鼻をくすぐる。自然と表情が緩んでしまう。だめだ、食べたくなってきた。 だが、私だって中身は大人だ。子供とは違って、我慢という言葉を知っている。 私は負けそうになる心に叱咤し、必死に抵抗の言葉を絞り出す。 「で、でも、知らない人からの物は貰っちゃいけないって・・・・・」 しかしその言葉は逆効果。 「なら、僕が食べちゃうけど・・・・・」 残念そうな表情を浮かべ、あまりにも呆気なく離れる指。薄まる香りに意図せず、あっ、と小さく声があがる。 その声に反応したイサがこちらを向いた。 「あ・・・・・」 目を丸くしているのを見て、しまったと口を押さえる。これでは相手の思うつぼではないか。 苦い顔をする私にイサは、大丈夫だよ、と優しく声をかけた。紅い瞳が狼狽える私を映す。 「・・・・・毒とかは入ってないから」 ね、という甘く蕩けるような囁き。 再び甘美な香りが近づき、ゴクリと喉が鳴った。
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