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───びっくりした・・・・・近い、近いよこれは。
とはいえ、ずっと持ったままでは相手に不快な思いをさせてしまう。なるべく印象は良くしておきたい。
とりあえず少し舐めて、食べても大丈夫かを判断しよう。そう考え、私はチロと小さく舌を出す。
よし、とぺろりとひと舐め。その瞬間、私に衝撃が走った。無意識に呟く。
「・・・・・あまい」
口の中でふわりと広がる花の香り。蜂蜜のようにとろける甘さが、一瞬で口いっぱいに溶け込んだ。たまらず、丸ごと口の中に放り込む。
「どう?」
「・・・・・おいしい」
それを聞くとイサは満足気に微笑み、「じゃあこれもあげるよ」と持っていた袋を差し出した。
恐る恐るではあるが、遠慮せずにそれを受けとる。
・・・・・食べ物の誘惑は恐ろしい。精々デブ活にならないように気をつけよう。
「・・・・・、ありがとう。でも、なんで私なんかに・・・・・」
「ああ、それは部屋に入っちゃったお詫びかな。───気に入ってもらえたようで嬉しいよ」
それに僕は甘い物が苦手だから、と苦笑するイサに、なるほど、と相槌を返した。これはお詫びの品だと考えるのが妥当か。
何というお菓子? と聞くと、フロルショコラットだよと返ってきた。やはりチョコレートという名前ではなかったか、覚えておこう。
区切りが良いと判断した私は、ようやく本題へと移る。
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