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「それで、おにーさんはこれからどうするの?」
勿論、今すぐに帰ってほしいというのが本音である。ここが京都ならお茶漬けの一杯でも出していた所だ。
その事を暗に示しながら聞くが、イサは予想外な答えを出した。
「・・・・・うーん、ここに居候しようかな」
「ええっ!?」
「冗談だよ、冗談」
無理なことは知ってるよ、と言われ、ほっと胸を撫で下ろす。本当に笑えない冗談である。
「僕にもちゃんと家はあるからね、居候は必要ないよ」
そりゃそうだ。
それは身なりを見ればある程度はわかる。イサの着る服の素材は皆いい物のように見えた。流石にホームレスとまではいかないだろう。
それでもそれは口に出さずに、そうなんだ、と返事をしておく。
───部屋に来てから数十分はたっただろうか。未だにファーファラからの声はなく、廊下もしんと静まり返っているようだ。
時折聞こえてくる忙しない足音は、恐らく使用人のものだろう。
ウェルバートとクライシュは大丈夫なのか───部屋を飛び出して2人の元に行きたいが、出ることは許されておらず、その上こんな厄介事を抱えてしまった。
ファーファラに報告したいのは山々だが、扉を開けた瞬間首を切られそうなものである。それに、この男の事を言ったところで、無事に返してくれるかどうか・・・・・。
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