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───見知らぬ他人とはいえ、殺されるかもしれないのは放っておけないな。
私にも良心というものがある。
それに、他人事ではあるものの、関わってしまった以上は、こちらにも何かしらの影響が出てしまうかもしれない。
うーんと考えつつ、手持ち無沙汰にレースの袋を弄っていると、それを黙って見ていたイサがおもむろに聞く。
「───何かあったの?」
ピタリと袋を弄る手が止まった。だが、「何も無いよ」と再び弄り出す。・・・・・そんなに顔に出てしまっていたのか。
私はイサの方を向き、そんな事ないとでも言うようにその整った顔を見つめる。───不意に人差し指で眉間を押された。
「ほら、しかめっ面」
「・・・・・んー」
ぐりぐりとするその指を両手で掴む。やめて欲しいと目で訴えるとすぐに指を離した。
「やっぱり何かあった?」
どうやら相手は諦めの悪い奴らしい。意図せずとも貰い物されたし、仕方ないかと息を吐いた。
「・・・・・、教えたら帰ってくれる?」
ちらと横を窺いながら言えば、そんなに帰ってほしいの、と苦笑されてしまった。
そりゃあ、得体の知れない侵入者に長居はさせたくはない、と普通なら思うはずだ。
教えるのは、決してチョコに釣られたわけではない。・・・・・決して。
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