28.アフタヌーンティー

12/17

5934人が本棚に入れています
本棚に追加
/387ページ
「それじゃあ、僕はもう行くから・・・・・」 「あ、うん。じゃあね、おにーさん」 喉から出そうになった、二度と合わないと思うけどね、という言葉は無理矢理飲み込む。バイバイと手を振り別れを告げると、あっという間にその姿は掻き消えた。 刹那、背後で扉が乱暴に開かれた音がする。あまりにも大きな音に部屋が細かく震えた。 必至の形相で入ってきたファーファラを、何食わぬ顔で出迎える。 「コウ様!!」 「・・・・・、ファーファラさん? どうしたんですか?」 キョトンと首を傾げれば、ファーファラは目を丸くして動きを止めた。どうして・・・・・、という呟きが聞こえる。───視線の先にあるのは、閉じられている(・・・・・・・)窓。 ファーファラはそこを何度も見ていたが、暫くすると深く一礼した。自身の非礼を詫びる。 「い、いえ・・・・・突然失礼致しました。私の勘違いだったようです」 「そうですか。いきなりの事だったので、びっくりしちゃいました」 子供らしくにこにこと無邪気に返す。 一度は動揺したファーファラだったが、再度一礼すると扉の向こうへと戻っていった。 パタン、と今度は静かに扉が閉められる。 ───・・・・・すぐに窓を閉めておいてよかった。勘違いと思ってくれたか。 目にも止まらぬ早業。あれはもはや、一芸とも言えるだろう。 私はソファーに身体を埋め、もう一度窓の方を向いた。そこには消えないばかりか、さらに濃くなった白色の魔素。 ───その不自然な魔素の膜を見た時点で、ある程度予想はついていた。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加