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「ん? ───ああ、ヴィヴィか」
ヴィヴィと呼ばれた少女は小さな背丈を壁に預け、緩く巻かれた桃色の髪を耳にかけた。澄んだ青の瞳でイサを見上げる。
「・・・・・行くのか」
「・・・・・、珍しいね、引きこもりがこんなとこに来るなんて。───何しに来たの?」
一段低くなる声。ヴィヴィはゾクリと震えた身体を押さえ、心配するな、と目を逸らし手を振った。
───本能が彼を恐れている。
「妾はただ、お主の行動に興味があっただけじゃ───助けるつもりか?」
「・・・・・どんなに穢らわしい下等生物でも、あの子の為なら助けてあげるよ?」
「・・・・・、本気か」
信じられぬな、と目を見開いたヴィヴィが言うと、本当は凄くどうでもいいんだけどね、とイサは低い声で吐き捨てた。
ゴミを見るような表情───それは見慣れたものだ。だが、これから行おうとしている行為は到底信じられるものではない。
「・・・・・本当にお主───イサか?」
「・・・・・、失礼なこと言うね。間違いなく僕だよ?」
「お主もそれほどまでに入り込むものがあったのじゃな・・・・・意外じゃ。何事にも無関心かと思っておったわ」
「・・・・・ほんとに失礼だね。僕だって、趣味の一つや二つあるんだけど」
少し眉を顰めたイサがそう言うと、それは失礼したのぅ、とヴィヴィは壁から背を離した。
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