28.アフタヌーンティー

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白く美しかった聖殿が黒く染まるのを、イサは黙って見ていた。ソレは僅かな時間で目的を果たすと、蒸発するように消えていく。 そして、濃霧が晴れるようにして現れる聖殿。 「うん、こんなもんかな」 満足気に頷いたイサの目の前───残された聖殿に、白い魔素は全く存在しなかった。・・・・・そう、喰われたのだ、黒に。 あれ程までにプレッシャーを放っていた重圧さえも、今はない。 すっかり変わり果てた姿は、以前の聖殿とは大きく変わっていた。大方、魔法によって維持されていたのだろう。 ただの建物になった聖殿に脅威などあるはずもない。さて、と改めてイサは扉に手をかけた。 この先にいる者を助けなければ。 「───そうしたら、君は笑ってくれるよね」 そう言った彼は静かに笑う。最後に薄紅色の月を見上げ、中へと進んでいった。 ───黒々とした魔素が溢れ出す内部へ、と。
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