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分厚い雲が月を覆い隠し月光を遮る。夜風には針のような冷たさがあった。
そんな中、ミレイヤ=ブルーメは所々ほつれたローブ1枚だけを羽織り、当ても無く歩いていた。
照明の不十分な道は暗く、凸凹のある石畳は気をつけていないとつまづきそうである。
しかし、ミレイヤはふらつきながらも一歩一歩確実に進んでいた。その歩みに目的はない。
数日間何も入れていない腹は空腹感すら無く、ただただ吐き気のみがミレイヤの胃を支配する。綺麗に結ばれていた三つ編みも、今はだらしなく解れていた。
───もう数日も仲間たちとは顔を合わせていない。
心配してくれているだろうか、探してくれているのだろうか。・・・・・それとも忘れているのだろうか、要らない奴だと切ってしまっているのかもしれない。
はは、と力ない笑いで自嘲する。力ない者は生きていけない・・・・・当たり前の事だ。
あの少女によって一度は眠りかけた魂も、1人のお人好しのせいで起きてしまった。
───できることなら、そのまま眠りたかったです・・・・・
幼い少女にすら劣るこの実力。きっと仲間の耳にも届いているだろう。幼子から杖を奪おうとした挙句、反撃を食らわされ失神した、と。
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