29.聖殿

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「いきなり何ですか、あなたは!!」 「そうカッカしないでくださいよォ、事実を言ったまでじゃあないですかァ」 そう言えば、少年の指がミレイヤを指す。 「ほぅら、その魔素量───人間とはいえ、ちょーっと少なすぎますよねェ?」 「あなたには関係ありません!!」 小馬鹿にされたように言われ、ギリと歯を食いしばる。初対面とは思えない程の失礼さである。 これは関わるだけ無駄だと察したミレイヤは、さっさと少年の横を通り過ぎようとする。 そうして丁度横に並んだその時、少年の言葉が彼女の足を止めさせた。 「───貸しましょーかァ? 欲しいんでしょう、強い〝力〟が」 悪魔のように心の隙間に入り込むような誘惑。頭では危険だと分かっていても、その甘い囁きに抗う力など残っていない。 少年の声に導かれるように、ミレイヤは振り返った。視線の先で少年が笑う。 「・・・・・、強くなれるんですか? 私が?」 「はいィ、ボクは貸すだけですケドね。でも、強くなれること間違いなしですよォ」 言いながら少年が手を差し出す。少女のように細く白い手が目の前で広げられた。 手を取ってしまったらもう戻れない───本能でその事を悟ったミレイヤがゴクリと唾を飲み込む。
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