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───それはそれで仕方ない、か。
はは、と乾いた笑いが出てくる。
今まで死とは深く関わらなかったが為に、死に対する実感が湧かなかった。が、徐々にソレは湧き上がってきている。
まだ死んだわけではない。それに正当防衛だったじゃないか。私は、殺してない───
そう思い込むと、不意に吐き気がこみ上がり口元を押さえる。身近に迫った死は、思ったよりも私にダメージを与えたようだった。
「───巫女姫様には、くれぐれも失礼のないように」
暫く歩い先でようやく、「こちらです」と案内された先は重苦しい空気が広がっていた。無言の空間内に足音が大きく響く。
絵が描かれた高い造りの天井。さらに壁の上方部には、ステンドグラスのような繊細な飾りから光が漏れている。
本来なら、教会のように神秘的だと思えるものだが、今は全くそう感じなかった。・・・・・酷く苦しい。
聖殿の奥には数名の少女と、見知った面々がいた。
ウェルバートとフィウスト、フレデリカ───そして、全員に囲まれるようにして台の上に座っていたのは。
───泣きそうな表情をこちらに向けていたのは。
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