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それは先程無事を願った男性。
「クライ・・・・・シュ?」
小声で漏らした声は、思いの外ドーム状の空間に大きく響き渡った。驚愕と無事だったという安心感が入り交じり、無意識に足が止まってしまう。
呆然と前を見つめる。
「え、だって治癒魔法が効かないって・・・・・でもなんで? 怪我、治って・・・・・」
「───すまないっす!!」
続けて出そうとした言葉は、突然の大声によって遮られた。
え、と聞き返した私にクライシュは申し訳なさそうに謝った理由を話し始める。
「・・・・・俺、操られていたんすね。あの女に・・・・・」
「・・・・・、意識あったの?」
「まあ・・・・・そっすね」
驚いて目を見開いた私に、歯切れの悪い言葉で苦笑するクライシュ。
意識を保った上でのあの行動は、精神的にもかなり堪えたのだろう。思い出して苦しそうに眉を顰めては再び口を開く。
「副団長なのに勝てなかったばかりか、精神を支配されて操られるなんて・・・・・。しかも、俺はコウちゃんにあんな事まで・・・・・」
「・・・・・・・・」
こちらも殺されかけたのだから、『気にしないで』なんて軽い言葉はかけられない。
・・・・・だからといって、弱々しく落ち込むクライシュを見てしまっては、それを責める気も起きなかった。
その時、ずっと黙ってその様子を見ていたウェルバートが口を開く。
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