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「───とにかく、そこに突っ立っていないでもっと寄ったらどうだ?」
───・・・・・妙な言葉だな。
私はウェルバートの台詞に少し首を傾げる。まるで近寄ってほしいとでも言うようだと。
言葉に従わずその場に留まる私を不審に思ったのか、更にウェルバートは言葉を重ねた。
目に見えて不機嫌になっている。
「・・・・・どうした? 何を警戒している」
「いえ、別に」
私は口ではそう言ったものの、内心では「そりゃ警戒もするでしょーよ」と口を尖らせていた。
怪我をさせた本人がその身内に呼ばれる───この状況で警戒心を持たない方が可笑しい話だ。
それに、だ。
私は前に視線を落とす。
───目の前に、不自然な魔力溜まりがあるのに、わざわざ突っ込みたくはないよねぇ・・・・・
ちょうど私の前方、数歩先にそこだけ濃い魔力か集まっている。しかも、それは聖殿を覆っている魔力と同じものとみた。
規則正しい模様からして、明らかに設置系の魔法である。何の魔法かまではわからないが・・・・・。
罠だとわかっていて突っ込むバカは、果たしているのだろうか。・・・・・いや、いない。
もちろん、私もだ。
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