29.聖殿

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何故だろう、思っていたのと違う。 ───いやだって、突然正体がバレたら、普通もっと驚かない!? なんで、ノーリアクションなの、なんでピクリとも動かないの、怖いんですけど!? 私が人間ではないと告げられても、他は驚くどころか何の反応も見せていない。まるで予め知っていたかのような表情だ。 初めて味わう異様な雰囲気は、何処か不気味さをも感じさせる。 私が初めて動揺を表す中、巫女姫はすっと前に出ると薄い笑みを見せる。 「隠すのはよせ。私には、悪しきものを見分ける固有スキルがある。貴様の仲間である先程の男だってだな・・・・・」 そうだろうと思った。不信感を持たれたことはあったものの、これまでは誰にもバレなかったのだから。 それよりも、巫女姫の言葉に引っかかった。 「・・・・・先程の男?」 私が来る前にも誰か来ていたらしい。・・・・・それも、人間ではない何かが。 知り合いではないのか、と巫女姫は意外そうな顔をしたが、少し前に起きた出来事を教えてくれた。 「そこのメイドに伝えた通り、私の治療魔法は全くといっていいほど歯が立たなかった。使うことの出来る最高位の魔法───第6級魔法でさえもな」 魔法には基本13の階級に分けられている。11級から先は未知の領域、過去に讃えられた伝説の英雄ですら第10級魔法を行使するので精一杯だったという。 現在でも、確認されている最高位とされる魔法は、第8級魔法。 対して、一般魔術師が扱う魔法は第3級程度、第4級である転移魔法ですら使える者は限られる───それ故に、この少女は相当な実力者なのだろう。
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