29.聖殿

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「エンシャは・・・・・・」 あの時はまだ疑惑が残っていたが、クライシュの一件でそれはなくなった。──エンシャはきっと、きっと彼女の元にいる。 それに、私を助けてくれた黒い魔素。なぜ、変換をしなかった魔素という単体の物理攻撃が可能なのかは不明だが、アレを使いこなせれば戦闘の幅が広がる。 そうすれば力ずくでも・・・・・・。 不意に不安が広がった。 「・・・・・・私でいけるのかな」 アルマダの時ですら、ギリギリだった覚えがある。ほとんど感覚的な戦いだった。 しかし、アリスは魔族。勝てるのか、という疑問が付きまとう。 選択肢は2つ。自分が強くなるか、誰かに助けを求めるか。 現実的なのは前者だ。自分の正体がバレてしまった以上、ウェルバートに正直に話して外出の許可を・・・・・・それが出来なかったら、騎士団の訓練に参加させて貰うだとか── そこまで考えて、ふと彼らの視線を思い出し身を震わせた。「化け物かよ」とこびり付いた言葉は今でも離れない。その後のちょっとしたお巫山戯(ふざけ)で、少しは距離が縮まったものの彼らの態度にはまだ『怯え』が見える。 仕方ない話だとは思うが、未だに私は気にしてしまっていた。 ──黒い魔素を使いこなして自己強化。それと魔法陣の活用・・・・・・これで対抗出来るかどうか。 欲を言えば、後者も行いたいと思っている。仲間がいるということはかなり心強い。 「・・・・・・でも、相手が相手だ」 クライシュはもちろん、他の皆を巻き込むわけにはいかない。そうなると、思い浮かぶのは1人──あの侵入者だ。 予想するに彼は魔族。魔族であるアリスが相手となると適任だろうし、クライシュの傷を治したという彼の力はとてもありがたいものだ。 やっぱりもう一度会いたい。会って話がしたい。協力してくれないかもしれないけど、この黒い魔素について何か知っているなら・・・・・・知りたい。
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