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とうとうプライドすらも投げ捨てたのか、眼下には四つの土下座。
意外にも壮観な景色──というのは、一旦置いておいて・・・・・。
「恥ずかしいから、やめてくださいー!!」
次第に増える野次馬、ヒソヒソとこちらを指さして何か話している。聞こえなくともわかった──私にとっていい話ではないのは確かだ。
───・・・・・なぜなら、哀れみの目を向けているのは冒険者の方だから。
これじゃあまるで、成人済みの冒険者四人を土下座させてる鬼畜幼女じゃないですかやだー。
決して私はそんな鬼畜ではない、決して!!・・・・・実は心優しい幼女なんですよ。いやほんとに。
「と、とにかく立ってください・・・・・」
慌てて腕を掴んで立ち上がらせると、何を勘違いしたのか、リーダーの顔がパァと輝く。それに続く他三人。
「じゃ、じゃあ仲間に──」
「それとこれとは話が別です!!」
何勘違いしてんだこの馬鹿ども。
まだ来ないのか、と心の中で小さく舌打ちをして辺りを見渡すも、集まっているのは野次馬ばかりで、肝心の待ち人はいない。
悪事千里を走る──という訳では無いが、あれだけ目立ったんだ。そろそろ釣れてもおかしくはない筈。
おかしいな、と作戦失敗の文字がチラつき始める。
──丁度、氷の器から小さな麻袋へと、お金を移し替えた時だった。
「おい、嬢ちゃんが困ってるだろ?──強制的な勧誘は、ギルドの規則違反だ。いい加減諦めろ」
野太い声が背後から聞こえてくる。肩越しに見ると、分厚い筋肉にピチッと張り付いた灰色タンクトップが目に入った。
───・・・・・ん?
そのまま視線を上げてみる──無精髭が生えたおっさんの顔が見えた。鮮やかな赤い髪が青空に映えている。
───・・・・・んんんん?
どう見ても只の厳ついおっさんである。
予想していた姿とは遠くかけ離れた姿に、思わず振り返ってしまった。
待て、このマッチョは誰だ?
「あの・・・──」
「──すみません、レナードさん!!」
確かめる為に口から出た言葉は、バカによって遮られた。
歯痒い気持ちを残したまま、仕方なく私は口を噤む。
───やはり、この男とは馬が合わないようだ。
少しイラッときたが、お陰で名前を知ることが出来た・・・・・と言っても、名前だけじゃ何も分からないが。
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