夜明けのファルセット

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何がそんなに楽しいのか、ニコニコしてミルクティーを飲むヒメの横顔を盗み見ながら、ヒメがどういうつもりでここに居るのかまだ理解出来ずにいた。 タクシーの中で殴られるのを覚悟した俺だが、運転手の 「着きましたよ~」 の声に反射的に 「降ります」 と返事をしてしまった。 ヒメはシートから起き上がり、キョロキョロすると「ここ、どこ?」 と聞いて、俺のアパートだと答えたら 「ふうん」 と一言呟いて俺をじっと見た。 先に降りて、一か八か手を差し出したら、ヒメは握り締めて降りてきたのだ。 タクシーが走り去った後、俺は思わず 「何で?」 と聞いてしまった。
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