プロローグ

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「行ってきます!」 バイト先の運送会社で出発点呼をし、制服のボタンをきっちり締めて帽子を被り、後ろに 『庵原翔大』の名前が記載されたバンに乗り込む。 元気に挨拶しては来たが、今日の配達は気が重い…… この仕事を始めて二年近く経つが、あるエリアを受け持っていた先輩が都合で退職した為、俺がその後を受け継ぐ事になった。 ――予感はしていた。 もし、六年前と同じ所に彼女が住んで居たら…… 会ってしまうのではないかと。 でも、もう東京に居ないのかも知れない。 彼女は静岡から歌手を目指し上京し、一人暮らしをしていたのだ。 毎日、配達の荷札をチェックする度に心の何処かで彼女の名前が出てこないかと期待に似た気持ちがあった。
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