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そしてある日、とうとう見付けてしまった。
彼女の名前を。
静岡の住所から、送られて来た荷物。
思わず、心の中で何度もその名前を繰り返した。
……灰吹 美名。
……はいぶき……ひめ。
美名……
連絡を断ってからもう六年になる。
その間に色んな事があったが、美名もそうだろう。
……もう、俺の事を忘れているかも知れない。
そう思うと、鈍く胸が痛んだ。
ハンドルを握り、東京の中でも静かな住宅地にあるアパートにたどり着く。
車の窓越しに、美名の居る部屋を見ると、あの頃と違う色のカーテンが揺れていた。
いや、あの頃は、何色だったっけ……
俺は目を閉じて、六年前の思い出に意識を飛ばした。
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