プロローグ

3/3
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
そしてある日、とうとう見付けてしまった。 彼女の名前を。 静岡の住所から、送られて来た荷物。 思わず、心の中で何度もその名前を繰り返した。 ……灰吹 美名。 ……はいぶき……ひめ。 美名…… 連絡を断ってからもう六年になる。 その間に色んな事があったが、美名もそうだろう。 ……もう、俺の事を忘れているかも知れない。 そう思うと、鈍く胸が痛んだ。 ハンドルを握り、東京の中でも静かな住宅地にあるアパートにたどり着く。 車の窓越しに、美名の居る部屋を見ると、あの頃と違う色のカーテンが揺れていた。 いや、あの頃は、何色だったっけ…… 俺は目を閉じて、六年前の思い出に意識を飛ばした。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!