夜明けのファルセット

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「あの……」 必死に考え事をしていた俺は、真後ろにヒメが立っていたのにようやく気づき、飛び退く位驚く。 バスタオルで体を隠した状態ですぐ側に居るのだ。 濡れた髪と裸の白い肩が艶かしくて、息を呑む。 「何度も呼んだんだけど…… 服は?」 俺は我に返ってヒメの方を見ずにシャツを渡した。 「ありがとう……暫くそっち向いててね」 衣擦れの音がする。 俺は多分今、赤くなったり青くなったりしているのだろう。 タクシーの中でいきなりキスした上に部屋に連れ込んだ上、着替えはシャツ一枚だけ…… 『変態!』 と罵られて刺されるかも知れない…… もう完全に嫌われるだろう、と思った時、チョンチョンと背中をつつかれた。 「着たよ?」
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