夜明けのファルセット

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ヒメは救いを求める様な目で見つめている。 「……思わなかったの」 俺は大きく溜め息を付いた。 「ヒメは……無防備過ぎるね…… 俺が店で助けなかったら、ヒロヤに襲われてたよ?」 「助けてっ……て…… あなただって今襲ってるじゃないの!」 強烈なビンタが飛んで来た。 頬にジンジン痛みを感じながら、ヒメの手を握る。 「ゴメン…… だけど……俺は……」 「俺は何よ!」 ヒメに潤んだ目で睨み付けられるが、可愛くて頬が緩んでしまう。 「君が好きになったみたいだ……」 「……っ」 「ちゃんと順番を踏んで君と親しくなるつもりだったけど……」 「この何処が順番通りなのよ!バカっ」 またビンタされるが、その手を掴むとそっと口づけた。 腕の中のヒメは怒った様な、期待している様な、何かを言いたげに唇を僅かに開いて俺を見ていた。
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