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「ヒ……?」
「行かないで……」
消え入る様な声。
後ろから廻された華奢な腕が、指が小刻みに震えていた。
その手を掴むと、俺はヒメを抱き上げ再びベッドへ引きずり込む。
ヒメは潤んだ目で見つめているが、さっきまでの怯えた色は無かった。
ベッドに広がる長い髪を弄び、そっと口づけた。
「ねえ……分かっているの?」
「……だって……寂しいし」
「だってじゃないよ……俺が折角チャンスをあげたのに……」
深く溜め息を付くと、ヒメが突然目を輝かせて体を起こして二人の頭がぶつかってしまう。
「おうっ……な……何?」
俺は頭を押さえて呻いたが、痛いのは俺だけの様だ。
ヒメは平気そうにしている。
ギターを指差して俺を見た。
「ねえ!思ったんだけど、junkはバラードはやらないの?」
「……え?」
戸惑う俺を他所に、ヒメはギターを抱いて哀愁を感じるAマイナーのコードを奏でた。
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