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「バラードね……」
junkにはバラードの曲はない。
俺はその頃、バラードを歌う事に抵抗があった。
普段は口に出せない尖った、攻撃的な言葉や思いも音楽に載せればいくらでも吐き出せる。
それが自分のフラストレーションの捌け口でもあり、客もそういった傾向の曲調や歌詞を喜んでいるように見えたからだ。
ライヴは音楽を楽しむだけでなく、日頃のストレスを発散するんだ、という事をユミが言っていたが、それを聞いて成る程と思ったものだ。
暗く狭いフロアに顔も名前もわからない男女達がひしめきあい、大音量の中で自分を解き放つ。
しかしどんな音でも良いわけではない。
自分が心地よく酔えるサウンドやグルーヴだと察知した客はそのバンドの音の虜になる。
アップテンポの攻撃的なロックこそjunkらしさだと思うし、バラードは女々しくて嫌だとさえ思っていた。
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