夜明けのファルセット

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「バラードのラブソングを歌うのが女々しいとか思ってる?」 さっきまで泣いていた筈のヒメは、挑みかかる様な瞳で俺を見た。 「いや…… junkのイメージに合わないし…… そうだな……正直あんまり好きじゃないかな」 「良いバンドはね、バラードも良いの。 好きとか嫌いとかで自分の可能性を狭くするってつまらないわ」 ヒメはばっさり言った。 俺はムッとして、ヒメの腕を掴み身体を引き寄せる。 「きゃっ」 ヒメの腕からギターが落ちて不協和音が鳴る。 「さっきまで震えてた癖に……」 顎を掴んで見つめると、ヒメの瞳がまた潤んで唇が微かにわななく。 (……可愛い……) 再び強烈な思いで体が熱くなり、ヒメを押し倒した。
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