夜明けのファルセット

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ヒメは許さないと言いながら、頭を掴んで自ら口付けて来た。 短い触れるだけのキスだったが、俺の真芯に烈しい火が着くには充分過ぎた。 だが深く口付けようと顔を近付けると、ヒメは耳をグイと引っ張った。 「い、いてっ!」 ヒメは頬を染めている。 「……バンドのバラードじゃなくて、私の為に作って」 「……!」 「ダメ……?」 小さな唇の可愛らしいおねだりに、降参するしかなかった。 その夜はギターを片手に夢中でヒメの為のバラードを作っていた。 俺の膝の上にチョコンと頭を載せて、微笑みながらヒメが見つめていた。 「……しょう君……の声……大好きだな……」 「――え?」 ドキリとしてヒメを見たが、既にスヤスヤと寝息を立てていた。
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