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エンカウント
耳障りな電子音が鳴り響く。スマートフォンの画面には猫をモチーフとしたアイコンがゆらゆらと左右に揺れている。
着信、着信、着信。誰かが私と話そうとしている。
相手の顔も、ただの猫をモチーフとしたアイコンだ。それは目も鼻も口も、猫らしい口髭もない。
素性も知れない、誰かからの着信。
私はそれを無感動を装って、高鳴る鼓動なんか嘘だと言い聞かせながら、右手の人差し指でのっぺらぼうな猫に触れる。
「……もしもし」
薄っぺらい機械から聞こえてくる言葉は、この地球上のどこかにいるのっぺらぼうな誰かの声だ。
「もしもし」
そして、私も誰かにとっての、のっぺらぼうな猫となる。
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