Better Half

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入社後、負けん気の強い彼女は、直ぐに仕事に没頭し、見る見る内に社内での成績を伸ばして行ったが、私は収入を得るだけの仕事には、興味が持てず、言われた事だけはこなす、只々普通のサラリーマンに成った。だが週末の夜、シャッターの下りた人気のない商店街でギターを弾いたり、そこで知り合った若い子達のライブに客演する等の音楽活動だけは、細々と続けていた。 そんな私を彼女は飲みに誘う。ほとんどの場合が愚痴の聞き役である。その日も、やはりそうだった。 その日、仕事が予定より長引いていた私は、度々ラインを入れていたが、約束の場所に着いたのは一時間遅れだった。美子が怒っている様子は無いが、その表情から、相当落ち込んでいるのが分かる。 「悪い、待たせたね。」と声をかけると、 「来てくれて、ありがとう。」と小さな声で予想外の返事。 いつもの気の強い美子は何処に行ったんだろう? サークル時代から私に対してだけ、どことなく突っ慳貪で、この様に女っぽい態度で私に接っする彼女は初めてだ。それに、服装も今日はどことなく女っぽい。 「美子、どないしたん? 何か気持ち悪いなぁ、なんか女っぽいやん。まぁ、ええけど。なぁ、何処行く、いつもの所でええか?」と聞くと、彼女は言葉無しに頭を立てにふる。 ちなみに、私にも理由は分からないのだが、緊張したり考え事をしていたりすると関西弁になる。そして私は、いつもとは少し感じが違う美子の態度に確実に緊張していた。 次の瞬間、彼女は私の右肩を強く殴った。 「何すんねん、痛いやんけ!」 「気持ち悪いって何なのよ!」     
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