乗車

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家は近代マンション。何から何まで指紋や網膜などで鍵が開き、食事に関してもパネルから選べば勝手に壁の扉が開いて熱々の料理が出てくる。 不在がちな父に、一枚のカードを渡され「これで公共機関にはすべて乗れる」とクレジットカードとは別に渡されていたが、一度も使ったこともなければ、家からまだ外にも出たことがなかった。 「仕方ない……か」 身支度を整え家を出て、地図を見ながらバス停らしきところに行く。 バスはテレビで見たことのある二階建てバス。 人も少なかったので、前の人の真似をして前の入口から乗り椅子に座る。 乗る時にカードをみんな翳していたので、その真似をしたが、降りる時にどこにお金を入れるんだろうと、真ん中にある降りる専用のドア付近をじっと見る。
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