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紫陽花の花言葉
キャラメルラテにキウイのフルーツサンド、パクリと口に頬張れば甘みと酸味のバランスがとても良く、食べる場所も手伝ってより美味しく感じる。
――そう、今日は母の『頼まれごと』で街に出て、目当ての物を買い終えた後、カフェに立ち寄り女子好みなメニューをあえて選んでみたのだ。
瑠里は『予定がある』と出かけて行き、フクロウの世界に熱を入れすぎな気もするが、今は声を掛けても無駄だと分かっているので一人で出かける事にした。
以前母の日と誕生日プレゼントは買ったものの、それとは別に『エプロンが欲しい』と即リクエストされ、感謝の気持ちが伝わってこないが毎度の話。
普段なら却下するけど、お洒落に言えばガーデニングという名の農作業……のエプロンは必需品で尚且つ注文が多くなる。
綿素材で割烹着のタイプでないと、草刈りの時は汗でムレたり、草が中に入るとクレームがうるさい。
以前街中の商店街にたまたまあったので、そこで購入して以来ずっと買い続けていた。
安くておばさんの愛想もいいし、気兼ねなく入りやすい所もお気に入りだ。
その帰りにご褒美として、ファッションビル中にあるカフェに寄りプチ贅沢を堪能していた。
平日なので人はそれほどいないが、近所にお店がオープンしたのか皆そこのショッパーを持っている。
『あれはパンっぽいな……安かったらお土産に買って帰ろう』
ここは八階フロアのど真ん中にカフェがあり、お茶をしながらショップに入らず様子を見れるというのも小心な貧乏人にとっては有難い立地だった。
ガラスもないので解放感もあり、フランスの街並みに合いそうな、古びたテーブルや椅子もセンスがよく感じ、さすがファッションビルに入ってるだけあってサマになっている。
「――あれ、もしかして月影さんじゃない?」
少し甲高い女性の声にビクッとして振り向くと、いつ頃かも覚えてないが、バイト先で一緒だった金持ち女に似ていた。
相変わらずブランド物のバッグに、流行りの服を着てネイルにも余念がなく見た目の隙は全くない。
「……お久しぶりです」
としか言いようがないが、確か最新のコートを買うのにつき合わされたり、一緒にいると惨めな気分になったのをぼんやりと覚えている。
私が嫌いな『生活に困ってないけどバイト経験したい』お嬢さんの一人で、会いたくはないタイプだ。
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