紫陽花の花言葉

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――翌日の夕方。 仕事の支度をしていてもチャンネルは相変わらずレッドリストで、本日の一挙放送は昼過ぎから始まったようだ。 着替えを済ませおにぎりを頬張る私達に、聞いてもないのに解説を織り交ぜてくるので、結末を聞きたくないタイプの妹は顔をしかめてクレームを言う。 「今その手前見てんだから、先に言ったら意味ないでしょ!黙っててよ」 「このオバサンもさ、ずっとレイノルドに仕え、死体の始末とか痕跡消す裏方に徹してたのに、少しのミスであっさりと殺されるって本当に冷酷だよね」 「もうっ!なんでネタバレ言うの!?」 顔を真っ赤にして怒り、気分を害したように冷蔵庫からアイスコーヒーを出す瑠里。 それに引き替え私は気にしないタイプなので、黙って画面を見つめていた。 バツが悪くなったドラム缶は、フィナンシェの袋を開け、雑誌を捲りながら王子達の頭を撫でている。 「そうそう、前にハツさん達と紫陽花の展示会に行ったんだけど、新種の銀河って凄く綺麗だったよ」 「ふぅん、花にそんな興味持ち始めるって成長したよね」 「でしょう?花言葉も気にしたり、ちょっと満喫してるんだよね」 話題を逸らしたいのが伝わるので乗っかってみたが、ハツさん達が友達になってくれたおかげで、いい趣味まで見つけたようだ。 瑠里は会話に入らず無言で画面を見ていたが、少しだけ目を細めたのを見逃してはいない。 なんだかんだ言って妹は母には弱く、顔を綻ばせながら話す姿を嬉しいと思っているのだ。 「じゃあ出かけようか、次の話から録画しといて」 「しっかり稼いで来てね」 見送りのイナリの顔でテンションを上げようと思ったのに、上目使いで可愛く見せようとしてくるキセロに溜め息が出た。 いつもより一時間早いとはいえ、すっかり日も沈んでるので、急に現実に引き戻された気分で足取りも重くなる。 「今から用心棒のオーディション……だよね」 「そうだった、小遣いの事ばかり考えてたけど、受からないと話にならんかったわ」 アッサリ言い放つ妹は小さな事は気にしてない様子で、そういう性格が羨ましくて仕方ない。 受付では木村さんがニッコリと挨拶をしてくれたが、ロッカーに準備されてる着替えはつなぎではなく黒の細身のスーツで『葬儀の参列者』みたいないでたちだ。
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