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「黒のスーツにネクタイって、まんまだね……」
「まぁ細身でお洒落ではあるけど、用心棒っていえばこういう感じじゃない?レッドリストのマフィアの手下もみんな黒のスーツじゃん」
「確かに……面接だとしても、スカートスーツで志望動機聞かれる雰囲気じゃなし、逆に趣味聞かれても困るわ」
ケラケラ笑いながら指示された部屋に入る瑠里とは逆に、私は胃の辺りが痛くなる位に緊張をしていた。
「よし、サイズはピッタリみたいだね。それも『仕事用』だから動きやすさと機能性は抜群だからね」
コーヒーを淹れて待ってくれてた木村さんが席に着くと、早速説明に入った。
虎の世界の会員制のクラブは、トップの幹部の息がかかってるのでなんでも揉み消す代わりにセキュリティは超がつくほど厳重らしい。
商人や医者、弁護士、裏の世界の者やその他の世界からも取引の場所や極秘で羽を伸ばしに来る者も多く、虎の世界の警察組織では潜入が厳しいエリアのようだ。
建物の外観はお洒落なレストランらしいが、敷地内に一歩入ったらカメラで監視され、怪しい行動をすれば、用心棒が一瞬で現れるらしい。
和音さんは目の前にある喫茶店のウエイターで潜入する事になり、用心棒の面接はリーダーと私達のみらしいが、数時間前にリーダーは虎の世界に入った。
「あの……喫茶店のバイトを私達に回すって案はなかったんでしょうか?」
「ごめんね、夜のエリアだから客はホステスとかが多くて……男性で尚且つアイドル系のルックスの和音にピッタリでしょ?」
「……なるほど」
喫茶店でのバイトや、百歩譲ってホステス……のチョイスもなかった私達は『用心棒扱い』にかなり複雑な気分だ。
「なんだか切ないね、カマの八雲さんより本物の女性の私らが用心棒ってさ」
「何言ってんの?!瑠里達は未成年でしょ、悪い虫でもついたら大変だから」
アハハと三人顔を見合わせ、乾笑いで誤魔化したが、『未成年で用心棒の方が危険だろ』と心で思い口には出さないでいた。
「滋のお誘いだけど、通常の仕事に手当ての方が金額もいいし、バイトにしては内容ヘビーだし。損はさせないから安心して。今後も無闇に決めず、相談してね」
「は――い!」
ヘビーという言葉が頭から離れなかったが、とりあえず荷物を持ちパネル部屋に向かった。
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