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エレベーターを降りると、ボリュームを下げたクラッシックの音と談笑する男女の声、ふんわりとお酒の匂いが漂ってくる。
上にはシャンデリアが均等に並んでいて大理石の床を照らし、グレーの絨毯が真ん中に敷いてあり何だかお店のランクがこの時点で分かる。
『絶対高いよね……ここ』
奥に進むとテレビでも兎の世界でも見た事があるが、いかにもな雰囲気で若い女性……というか恐らく虎人間だが、可愛いというよりスレンダーな美人が多い。
「お前らはこっちだ」
フロアを横切りバーカウンター奥の扉を開けると、監視カメラのモニターがズラッと並んでいて、待機してる用心棒達に睨まれた。
「今日からここで働くネモフィラとミルテだ。すぐに飲み物を用意するから説明を聞いといてくれ」
部屋は八畳ぐらいで強そうな男性……といっても全員虎ではなく、他の世界の住人も混ざってそうだ。
人数は私達を除いて十人程度だろうか?
その中に、この雰囲気に馴染みすぎてるウチのリーダー朝霧悟も入っていた。
「俺は寒梅だ。簡単に説明するが、呼び出しあればそっちを優先する」
「はい…」
説明役の男は先程真ん中に座っていたダミーの虎人間だ。
このクラブはフロアの他に個室があり、そこは主に商談や取引に使われるが、女性達が呼ばれた時は私達も同行するのが基本。
用心棒は皆インカムでやり取りして、喧嘩やトラブルがあればすぐに駆け付ける。
殺しがあった時も騒がず処理係を呼び、客を動揺させないようにする事。
見たり聞いた事はすぐに忘れる等が説明された。
インカムを手渡されイヤホンを耳につけていると、アイスコーヒーが運ばれスプレーを振って口にするとあっさりしていて飲みやすい。
虎の世界では飲酒や喫煙という大人の扱いは『十六歳から』だそうで、店の女性も瑠里と同じ年の子がいるらしい。
女性の源氏名は『花の名前』が使われており、性別だけは女性の私達も、獺祭が名付けてくれたという訳だ。
獺祭は用心棒のまとめ役であり、影の経営者と呼ばれ恐れられているが、話をしてくれた男は尊敬してるようにも感じた。
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