88人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前が獺祭のみぞおちを連打した時は、立ち上がろうかと思った位だ」
「いや、あの、こっちも必死だったというか……」
瑠里は澄ましてアイスコーヒーを飲んでいたが、ウチのリーダーはチラッとこちらを見たので目を伏せておいた。
説明が一通り終わると呼び出しされたのか寒梅は部屋を出ていき、残った用心棒達がこちらに注目していた。
「女にこの仕事紹介って……あの優男悪魔やろか?」
「まぁ、どうでもいいさ。今日で付き合い終わるかもしんねぇし、今は猫の手でも借りたいんじゃないの?」
完全に数日で死ぬと思われてるようで気分が悪いが、みんな強そうだしむしろ女性扱いをしてくれてると喜ぶべきかもしれない。
インカムから『悟、ネモフィラフロアへ』と合図されると、瑠里はラージャと嬉しそうに突っ走っていた。
メチャノリノリじゃん、と呆れてため息を漏らしたが、やはり心配なので監視カメラから目は放してない。
リーダーは客の男の手首を持ち、裏口に連れて行こうとしたが、瑠里は手を上げて止めたように見え、何かホステスに耳打ちをしている。
『瑠里……何やってんの?!』
ヒヤヒヤしていたが、リーダーは戻って来るようで通路に映っていたが、瑠里はそのまま残りソファの奥側を陣取り、から揚げを頬張っていた。
ドアから戻ってきてリーダーは、些細な事だから出る幕じゃないと追い返されたといい、残った用心棒や私も含めポカンとしたのは言うまでもない。
「……私止めに行きましょうか。から揚げとか食べてるし、放っておいたら注文し始めますよ?」
「いや、俺も獺祭に聞いてみたが『上客だし穏便に済むならそれでいい』と言われ戻って来た。ホステス役の方が向いてるかもしんねーな」
「……それ、合ってるかも。なんか色んな物注文してるあのテーブル」
思わずリーダーと目を合わせて苦笑いしてると、今度は私とリーダーが個室に呼ばれ、走って向かっていた。
通常ならノックをするが、緊急で呼ばれた場合は渡されたカードキーを使うと全室開くようになっている。
リーダーがキー差してドアを開けると、一斉にこちらを見たが、皆軽食の最中でトラブルだとは思えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!