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「バイト急に辞めて心配したけど、元気そうで良かった。こういう所でお茶して大丈夫?」
「えっ?!」
確かに買い物につき合わされた時、皆がお茶してても水で我慢した事もあったが、それを今知らない人の前で言われるのも、チクリと胸が痛む。
相変わらず付き添いみたいな子が二人いるが、みんな裕福そうだしバランスも取れている。
「そうだ!これから男性達と合流するんだけど、月影さんも来ない?」
「いえ、もう帰りますので……」
嫌そうに少し顔を歪めてるにも関わらず、三人で席を囲むように立たれ面白がってるというか見下したような視線も正直傷ついていた。
「相手はイケメンでね……と言っても月影さんそういうのは興味なかったっけ?」
隣のテーブルに座り、他の子が注文しに行くと私の格好をチラ見して、エナメルのバッグからコンパクトを出すと髪のカールを手ぐしで直していた。
『……この場から早く去りたい』
せっかくここまでは楽しい時間だったのに、こいつらに出会ったせいで一日気分が悪くなりそうだし、どんどん自分を卑下したくなってくる。
貧乏人はこのエリアに入ってくるなと言われてるみたいで、目線まで下がってきそうだ。
「やっぱここはホイップのトッピングだよね!写メ撮っとこう」
デコレートされたラテは確かに可愛いが、それだけで値段も上がるのに、アッサリと頼めるこの人達はやっぱり金持ちだ。
飲み物だけでランチ代になる金額を私には出せない……っていうか出したくない。
『感覚合わねーな……私には』
今の稼ぎなら頼もうと思えば出来るが、注文は済ませたし、勿体ないのでストローでラテを吸い込むと、写メを撮り終えた彼女達は溶け気味のホイップラテを上品に飲み始めた。
少しすると細身の男性が三人現れたが、人数は合ってるので私は引き立て役で誘われたのだと気づいた。
「あれ?友達一人増えたの?」
「うん、知り合いの月影さん。一緒に行きたいみたい」
「っ…!」
これから先のシナリオは大体予想できたので、フルーツサンドを全部食べ終えてから断ろうと口にガツガツ放り込んだ。
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